ブロックチェーンがもたらす変革
「BLOCKCHAIN REVOLUTION(ブロックチェーンレボリューション)」ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット著
BTC(ビットコイン)を代表とする暗号通貨(仮想通貨)が話題になることも少なくない今日この頃。現在は投機的な視点から取り上げられることが多いです。
では、そもそもこの暗号通貨とは?
本書においては以下の様に説明されている。
「暗号通貨が従来の通貨と違うところは、発行にも管理にも国が関与しないという点だ。一連のルールに従った分散型コンピューティングによって、信頼された第三者を介することなく、端末間でやりとりされるデータに嘘がないことを保証する。」(本書5ページ)
日本円では日銀が価値を担保しています。供給量を操作することで、価値が極端に変動しないように管理してくれています。日常ではあまり意識されることはありませんが、そういった「信頼できる管理主体(日銀)」によって、我々が使う日本円はコントロールされています。
送金については、金融機関に手数料を支払うことで日常行われていますね。
さぁ、現在の日常に不便を感じているでしょうか?
恐らく、「不便である」という方は少ないと思います。
では、今の通貨があれば、十分ではないのか。暗号通貨なんてよく分からないものは必要ない。単なる投機商品みたいなものだろう。
そう考えている方がいるのが実情ですね。
しかし、そうではないからこそ、ここまで話題になるわけですね。
ここで大切なキーワードが
「ブロックチェーン」というわけですね。
ブロックチェーンとは本書の言葉を借りると「あらゆる取引が記録された世界規模の帳簿のようなもので、大規模なP2Pネットワーク(サーバーを介さず、個々の参加者が対等な立場で直接やりとりするネットワーク)に支えられている。このネットワークの参加者たちが取引の正しさを検証し、承認する」(本書8ページ)ものである。
これ本当に革新的な技術。
中心的なデータベースが存在しないわけで、世界中のPCでデータを公に管理しているわけですね。つまり事実上データの改ざんは不可能。そして、暗号技術を利用した高度なセキュリティが備わっています。
このブロックチェーンこそが注目されるべき真髄であると私は思っています。
暗号通貨も一種のブロックチェーンというわけです。
このブロックチェーン技術を駆使すれば、あらゆる取引を改ざん不可能
なカタチで記録できるのです。
では、その技術が普及することで世の中の何が変わるのか?
本書でその答えが記述されています。とても分かりやすいので、そのまま引用します。
「なぜ記録なんかにこだわるのかって?真実は僕たちを自由にするからだ。分散型の信頼システムは、あらゆる場面に応用できる。絵や音楽を売って生計を立てたいとき。ハンバーグの肉が本当はどこから来たか知りたいとき。海外で働いて稼いだ金を、高い手数料をとられずに祖国の家族に送金したいとき。地震の復興支援に来て、崩れた家を建て直すためにその土地の持ち主を知りたいとき。政治の不透明さにうんざりして真実を知りたいとき。ソーシャルメディア上のデータを他人に利用されたくないとき。」(本書9ページ〜10ページ)
上記こそ、このブロックチェーン技術が注目される理由ではないでしょうか?
ちなみに最近話題のコインチェック。暗号通貨ネムの巨額流出がニュースとなりましたが、あれは暗号通貨自体の問題というよりは、取引所のセキュリティが致命的な問題です。
話が逸れましたが、現在ここまで暗号通貨が話題になるのは、このブロックチェーン技術を根幹に持っているためなのです。
これは世の中のしくみに大きな変革をもたらすと私は確信しています。
しかし、普及するまでにはまだまだ時間がかかるでしょう。
まずもって、既得権益との衝突。
管理主体が不要なシステムが普及することで、困る組織もあるわけですね。世界中の中央銀行の対応にバラツキが見られることからも分かるように、正直、新技術との付き合い方に試行錯誤の状態です。
新技術は、新たな雇用を創出すると共に、多くの既存産業に退場を促すことになるでしょう。
もう1つはセキュリティ。
全てがデジタルなわけで。例えば暗号通貨を利用するにも、まずは取引所で通貨を入手しないといけません。
たとえ暗号通貨自体の技術やセキュリティが高くても、取引所がサイバー攻撃に弱ければ、結局は信頼性の高い「価値交換手段」にはなり得ない。サイバー攻撃はコインチェックだけでなく、世界中で発生しています。
3つ目は暗号通貨の値動き。需要と供給によって価格が決まるが故に大きな変動があります。そういった意味では「価値保存手段」としてはまだまだですね(メディアはこの価値保存に重きを置いた報道が多いように感じますが…)。
上記のような問題があるのは確かです。ですが、世の中は変革の連続。恐らくこの変革の波は止まらないと思います。
暗号通貨イーサリアムが備えるスマートコントラクト(プログラム化された契約)など、既に応用実験が多く行われています。
また、日本にいると意識することがあまりないですが、アフリカ諸国などの新興国では銀行口座を開設できない人も多いのが実情。
しかし、これも意外かも知れませんが、アフリカはスマホなどの携帯端末は既にかなり普及しています。
そういった国では、先進国が通ってきた金融インフラの発達をそのまま辿るのではなく、ブロックチェーンを活用したインフラが発達していくのではないでしょうか。
グローバル化が進む世界。
今回の技術革新の影響は当然世界規模です。とても一国の規制でどうこうできる変革ではないと思います。
この技術をどう活かしていくか。
BTCの値動きのような表面的な話題ではなく、もっと深層について議論が活発になることが望まれますね。